日別アーカイブ: 2013/03/13

同時期同テーマの商品力

コナミ在籍中は主にアーケード(ゲーセン)ゲームの開発に携わっていたが、似たテーマの商品が同時期に他社から発売されるケースが多々あった。
産業スパイ、なんてドラマチックな事態も在るには在ったが、大体は偶然、と言うか、必然だ。

業界の流れやハードウェアの進歩状況から、1年後の市場ニーズが匂いたつ。
それを嗅ぎ付けるのは、他社も同じ。
学校のテストで、カンニングをしていない二人が同じ答を出すのと似ている。

そこで一つ、ライバルより商品力を上げる方法が有る。
早く発売する事だ。
ゲーセンの経営者は潤沢な資金力を有してはいない。
一つのテーマの商品を仕入れたら、後発で同じテーマの商品が出ても仕入れにくい。
セガ『ダンクショット』さん、ごめんなさい。あなたは、開発者の熱い想いが読み取れるゲームでした。

他の商品同様、ゲームも手を掛ければ掛けるほど良くなる。
なので、ディレクターは1ヶ月でも2週間でも製作終了日を延ばしたい。
しかし、他社が同テーマの商品を先に発売するかも知れず、1ヶ月の延長が、よほど高インカムをもたらす変革でなければ、1年間の苦労を水泡に変える事もある。

とは言え、ディレクターは商品力を上げる事ではなく、製品の質を高める事が仕事なので、延長するか否かはプロデューサーしか判断できない。
実際には、他社のライバルとなる商品情報は入って来るので、延長してぎゃふんと言わせるか、抱き合わせで巧みな営業で乗り切るか、商品化せずお蔵入りにするかなど、選択肢は多い。
ま、1年作ってきたものを、1ヶ月の延長で見違えるインカムにするのはほぼ無理だけど。

企画書以上の仕様を盛り込まず、スケジュールを前倒しすれば、広報や営業に好影響を与える。そんなディレクターは、既にプロデューサーだ。