日別アーカイブ: 2013/03/29

オーダーメード学習

2013年2月より、ボランティアで学習支援で教師を務めている。仮にR会と呼ぼう。
学習支援にも色々なフォーマットが有り、生活保護世帯の子を対象としたもの、虐待を受けた子を対象としたもの等が有るが、R会は単に習熟度の低い子(高くてもOK)を対象としたものだ。

R会では「まず来てもらう」事が優先で、活動の主体は「習熟度に合ったドリルをこなす」事。
解らない事をやらされて嫌気がさしてR会に来なくなるのを避ける為、学習を避ける。
表立って「避ける」とは言わないが、婉曲的に批判する。

確かに、来ないよりは来た方がいいし、しないよりはドリルをした方がいい。
しかし俺は、現時点で解けない問題を解けるように教え、「解ける楽しさ」を教えるべきと考える。
トウモロコシを与えるのではなく、その作り方を教えるべきだと。
よって、R会の方向性とは違うが、俺は出来るだけ教える事に注力している。

或る小1の子は「2+7」を解くのに、「2」の上に○を2つ描き「7」の上に○を7つ描き、それらを左(2個の○)から数えて答9を出していた。
そこで、
「足し算は右から足しても同じ」と教え、
○を描かず、それぞれの数字の上に○が描かれていると想像し、
大きい方(7)を心の中で、いち、に、さん、し、ご、ろく、しち、と数えたら、小さい方(2)を、はち、く、と数えると、答が出る事を教えた。
それが出来ると、「スゴイ!アンザンで解けるようになった!」と大声で褒める。
彼女は「暗算」の意味を知らないだろうが、「○を描かずに答える事」だと認識したろう。
当然、10問解くのに掛かる時間は飛躍的に短縮される。
今度はその速さを褒める。
もう彼女は少々無理をしても○を描かなくなった。
ズル賢さを楽しんでいるのだろう。多くの教師から褒められて嬉しいのだろう。
言わばゲーミフィケーションだ。

或る高1の子は数学を全く分かっていない。代数もべき乗も関数も因数分解も知らない。
宿題ドリルを前にして「成す術が無い」状態。初めて見るといった風情。
最初は戸惑ったが、一から教えていくと、段々と分かるようになり、間違いながらも、遅いながらも、因数分解が解けるようになった。
聞けば、授業中は寝ているそうだ。
そうだろう。代数も知らなきゃ、授業に着いていけない。授業は眠たい。てか、寝るしかない。
しかし本当は(R会に来てるぐらいだから)勉強する気は有るし、理解力が低いながらも習熟する。

どちらのケースにも言えるのは、それぞれに適した勉強法を用いれば出来るのに、という口惜しさ。
理解力の低い子が学校で置いてきぼりになるのは仕方がないけれど、マンツーマンでフォローする体制とか、落第を気にしない社会とか、そんな風潮があれば救われる子は沢山居るのだろうと、残念な気がする。
3月末で行くのをやめるつもりだったが、やめられそうにない。